東日本大震災直後に始まった心の相談室の活動と、臨床宗教師の活動への継承について

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2011年3月11日に発生した東日本大震災は死者・行方不明者が2万人を超える未曽有の大災害であった。東日本大震災直後、亡くなられた方々のお弔いも出来かねる状況下、宮城県宗教法人連絡協議会、仙台仏教会、仙台キリスト教連合などが連携し、仙台市葛岡斎場においてボランティアでの相談とお弔いを始めたのが「心の相談室」である。その後「公共性をもって現場に入り、闇に降りていく道しるべを示す宗教者が必要だ」と提唱する故岡部健氏が初代室長となり、以下の被災者に対する支援活動(宗教的ケア・スピチュアルケア)を推進してきた。

①各教宗派によるお弔いの儀礼:毎月11日葛岡墓苑内において犠牲者や行方不明者、身元不明者の慰霊、祈念。

②傾聴移動喫茶カフェ・デ・モンク:被災者の方々のところに“行ッテ”想いを聴く。

③電話相談:フリーダイヤルでお互い名乗らず、だれにも気兼ねせず、自由に自分の思いを話せる場の提供。

④カフェ・デ・モンクラジオ版(FM放送):板橋恵子パーソナリティによる著名人・被災地支援者との対談。全105回、99名の方々。

これらの活動は、いずれも現場に“行ッテ”の精神に基づいていた。これらの実践を契機として、故岡部健氏の提唱により「臨床宗教師」の理念が生まれた。平成24(2012)年4月東北大学大学院文学研究科に「実践宗教学寄附講座」が開設され、これまで150名を超える宗教者が臨床宗教師研修講座を修了し、全国各地、様々な困難の現場で活動しており、また、その活動を支えるために日本臨床宗教師会や北海道東北臨床宗教師会が結成されている。「心の相談室」は「実践宗教学寄附講座運営委員会」(その後諮問委員会と改称)を構成し、この養成講座を支えた。

大震災から6年を経ようとする今、「心の相談室」が初期の役割を果たし解散する過程にあることを見据え、現場に“行ッテ”の精神を継承し、被災者に向き合った「心の相談室」の活動を、苦悶する人々と向き合う『北海道東北臨床宗教師会』の事業として、ここに移管することとした。

「心の相談室」は震災直後の宗教者の応急対応として展開されてきたが今後は、その現場を北海道東北臨床宗教師会が継承して恒常的な取り組みとして展開し、「臨床宗教師」の活動と存在が社会に定着するよう、社会の様々な困難な問題に挑戦し、邁進する。また、既にこのような問題に取り組んでいる宗教者の活動に学び・連携して公共空間における諸宗教者の協働を一層支援・推進していくことを決議する。

(2017年2月、北海道東北臨床宗教師会会則改正に伴い決議された文章を一部改変して転載した)

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